2024年6月20日
2022年1月26日
2022年1月から電子帳簿保存法が改正されたことはご存知でしょうか?
法律関係の難しい言葉を聞くと、「私には関係ない」と、つい思ってしまいがちです。
しかし、スモールビジネスであっても事業を営む以上は経営者であり、社会のルールを守る必要があります。
今回の電子帳簿保存法の改正もスモールビジネスの経営者に、これから必要な知識のひとつです。
ではどのような改正が行われたのでしょうか。
電子帳簿保存法の概要と改正内容を解説します。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、一定条件のもとに帳簿や決算書、国税関係の書類を電子化して保存できることを定めた法律です。
これまで日本の商習慣では、領収書や請求書、確定申告等の決算関係の書類などは紙で出力して取引先や税務署とやり取りしてきました。
法律上でも「紙での保存」が原則でしたが、インターネットの発達や紙保存の物理的な負担軽減のために、1998年に電子保存を認める電子帳簿保存法が施行されました。
その後、インターネットの発展や企業のIT化の加速によって何度か改正が行われ、電子的に帳簿を保存する条件が徐々に緩和されてきた経緯があります。
ちなみにグローバルでは、早い時期から電子取引が盛んです。
例えばアメリカは、電子メールや電子商取引システムによるやり取りが早くから発達してきました。
日本より国土が広いアメリカでは、紙でのやり取りは時間もお金もかかるからです。
電子商取引が世界規模で進んでいることに対応して、電子帳簿保存法が改正されたわけです。
この法律は、日本における企業のIT化や企業間のやり取りの電子化を推進するために重要なのです。
電子帳簿保存法で定められた保存方法
電子帳簿保存法では、保存方法が大きく2つに定められています。
電子データ保存
帳簿を電子データとして保存する方法です。
仕訳帳などの国税関係の帳簿、貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類、取引関係書類のうち、自分で作成した領収書、見積書、請求書などの写しが対象です。
また、取引の最初から最後までを電子的に取引するEDIや電子メール、インターネットを使用した電子取引も電子データ保存の対象となります。
スキャナ保存
相手から受領した領収書、請求書、見積書などの取引関係書類はスキャナで紙を読み込んで電子保存する必要があります。
ただし、スキャナでは読み込めない大きさの書類は紙で保存します。
また、万一の不備に備えて紙の書類も、次の監査や確定申告まで一定期間保存しておくとよいでしょう。
こうした保存方法に関する認識を持っておかなければ、取引先が電子取引を導入した場合に対応できなくなるほか、最悪の場合は国税当局から指導を受ける可能性もあります。
電子帳簿保存法の概要を理解して、しっかりと対応しましょう。
2022年1月改正の目的と背景
日本の電子取引を支える電子帳簿保存法ですが、2022年1月にさらなる改正が行われました。
背景には新型コロナウィルスの影響により、企業で広まるテレワークの導入があります。
これまで日本の商習慣では、紙での対応が多く、さらには書類に押印が求められてきました。
テレワークで出社せずにほとんどの仕事ができるにも関わらず「ハンコを押すため」だけに出社するというケースが、ニュースで話題になっていたのも、記憶に新しいところです。
また、電子取引を導入する企業とそうではない企業間に格差が生まれています。
企業としては、紙で対応する取引先と電子取引で完結する取引先の両方に対応する負担も生まれています。
こうしたテレワークや電子化された取引に対応できない企業は、従業員の確保や取引先との信頼関係構築が難しくなり、事業の継続性が危ぶまれるほどになりつつあります。
そこで、さらなる電子取引の浸透と簡素化を目的として電子帳簿保存法が改正されたのです。
2022年改正のポイントと注意点
2022年の改正ポイントは大きく3つです。
電子取引の要件強化
まずは電子取引の要件が強化されました。
電子取引とは、取引情報(請求書、領収書、注文書など)を電磁的にやり取りすることです。
今回の改正以前は、電子取引のデータを紙で保存することも認められていましたが、改正後は紙で出力した書面は保存書類として取り扱わないことになりました。
ちなみに、電子取引には主に7つの方法があります。
・電子メールで受領した請求書や領収書のデータ(PDFなど)
・インターネットのホームページなどからダウンロードした請求書や領収書のデータ
・クラウドサービスを使用した請求書や領収書
・クレジットカード、交通系ICカードなどの支払いデータ、スマートフォンアプリを利用したサービスのデータ
・EDI(Electronic Data Interchange)システムによる取引
・ペーパーレス化されたファクシミリ(PCやクラウド上にFAXで送られた書類を保存するもの)
・USBメモリやDVDなどにより受領した領収書や請求書
要件緩和
今回の改正の重要な点が要件緩和です。
要件が緩和されたことで、電子取引が今後日本でより一層広まっていくことが考えられます。
要件緩和のポイントは4つです。
・承認制度の廃止
電子帳簿保存法に対応するためには、あらかじめ国税庁に届け出を行う必要があります。
これまでは届け出のあと、3か月ほど審査期間が設けられ、国税庁の承認がおりてから電子取引を行うことになっていました。
今回の改正により、審査期間が廃止され、国税庁へ届け出をするだけで電子取引が開始できるようになりました。
・タイムスタンプ要件の緩和
電子データは常に改ざんのリスクがあるため、電子取引で受領した書類は電子的な改ざんが行われていない証明であるタイムスタンプが必要です。
従来は担当者が自署のうえ、受領から3営業日以内にタイムスタンプの対応を行う必要がありました。
しかし改正により、担当者の自署が不要となり、対応の時間も2か月+7営業日以内に延長されました。
さらに、修正履歴が残せるシステムを利用した書類であればタイムスタンプも不要になります。
・適正事務処理要件の廃止
適正事務処理要件とは、取引書類の定期的な検査への対応や、取引上の不正を防ぐための抑止力として厳重な書類チェックを定めた要件です。
これまでは厳重チェックに対応するには紙原本が必要でした。
今回の改正により、この要件が廃止されたことで原本の即時廃棄も可能となりました。
・検索要件の緩和
電子データ保存の場合は、常に保存データを必要なタイミングで取り出せる検索機能を確保する必要があります。
これまでは検索に関する要件が細かく電子帳簿保存法で定められていましたが、対応するには高度な検索システムが必要となるため、企業に大きな負担となっていました。
今回の改正で検索要件が緩和されることにより、簡易的な検索システムでも対応ができるようになりました。
不正行為への対応
今回の改正では、より電子取引を浸透させるための要件緩和が中心でしたが、緩和には不正のリスクも伴います。
そこで改ざんなどの不正行為への罰則が設けられることになりました。
万が一、隠蔽や仮装などの行為があった場合、「通常課される重加算税の額に当該申告漏れ等に係る本税の10%に相当する金額を加算した金額」を重加算税として課税されます。
対応が楽になったとはいえ、改ざんなどの不正行為は行わないように厳重に注意しましょう。
改正に対応するには?
こうした改正に伴い、スモールビジネス事業者にも対応が求められています。
業務フローの見直し
まずは業務フローの見直しです。
主に法人と取引されている事業者では、紙でのやり取りが不要になる可能性があります。
見積りや請求に関する業務フローについて、取引先と相談しましょう。
また、個人向けのやり取りが多い事業者は、領収書の発行が電子対応できるようになります。
領収書発行数が多い場合は、この機会にクラウドサービスなどを利用した電子化に取り組んでみてはどうでしょうか。
経理業務の効率化
電子化により、押印や紙の発行などといった経理業務への負担が軽減されます。
この機会にクラウドサービスとオンラインアシスタントを活用して経理業務を半自動化すれば、業務を効率化することにもつながります。
システムの導入や見直し
最近ではスモールビジネス事業者でも利用しやすい請求書管理サービスが多く存在しています。
これまで使用していたサービスを見直し、新しいシステムを導入してもいいかもしれません。
特に大手企業と取引のある事業者なら、大手企業とも電子的にやりとりできるツールを選ぶとよいでしょう。
内部統制のチェック
従業員がいるスモールビジネス事業者であれば、従業員が電子取引でうっかり不正行為を行わないかどうかチェックが必要です。
従業員にも電子帳簿保存法の考え方を理解してもらうとともに、顧問税理士や弁護士と相談して、定期的に内部監査も行いましょう。
電子化によるデメリットへの対応
今回の改正による電子化は良いことばかりではありません。
特に電子保存に関しては、手間がかかります。
電子保存では、タイムスタンプを付与するか、帳票データを改変できないシステムを導入のうえ、必要な帳票をいつでも検索できるようにしておかなければなりません。
領収書や請求書、見積書であれば、日付、金額、取引先を明記して保存しておく必要があります。
国税庁が推奨する電子保存のやり方では、エクセルで表を作成して取引情報を保存しておくか、帳票のファイル名を「取引日_金額_取引先」の形式にして、保存します。
ファイルを保存する場合も、取引先別のフォルダを作成して保存するなど、工夫が必要です。
本業が忙しい中、こうした電子保存に関する作業は非常に面倒です。
そこで、この機会にスーパー秘書™などのオンラインアシスタントを活用して電子保存に関する事務処理を外注するのもよいでしょう。
電子保存への対応だけでも1営業日以上の工数が必要になるはずです。
1営業日あれば、新たな顧客の開拓やサービスの提供に時間をさけるはずです。
オンラインアシスタントを活用した外注で、時間と手間を削減しましょう。
まとめ
電子帳簿保存法の改正は、ビジネスをするうえでの事務処理を軽減させるものです。
すでにリモートワークや電子取引に対応している事業者であれば追い風になるはずです。
一方で、まだ電子取引に対応できていない事業者にとっては逆風にもなりえます。
今後、電子取引に対応できなければ、取引先やお客様の減少につながる可能性も高くなってきました。
もしまだ対応できていない場合は、なるべく早めに電子取引に対応することが望ましいです。
これから加速する電子社会に備えて、レベルアップするチャンスかもしれません。