12月に入り、今年も残りわずかになってきました。そして、年明け後は確定申告のシーズンになりますね。確定申告は会社員ならば会社が代行してくれる税金の手続きも、個人事業主である在宅ワーカーの場合は自分の責任で進めなければなりません。もし、初めての確定申告ということであれば、どんなことに気をつけて具体的に何をすればいいのでしょうか?
公認会計士・税理士の矢野裕紀さんに、確定申告の基本を教えていただきました。
皆さま、こんにちは!公認会計士・税理士の矢野裕紀と申します。
在宅ワーカーの皆さまに向けて、確定申告について解説させていただくことになりました。
今回は、「確定申告とは何か?」、を大きなテーマとしています。
特に大事なキーワードは、“ ”をつけて、繰り返し使っていますので、聞き慣れない言葉でも、ぜひこの記事を読んで、確定申告について今よりも理解を深めてください!
1.確定申告とは何か?
確定申告とは何か?それは、ズバリ、1年間の税金を“確定”させて、“申告”することです。読んで字のごとくなので、当たり前…と思われるかもしれませんが、お読みいただいている皆さまは、日々、税金に関するあれこれが“未確定”のまま過ごしていることにお気付きでしょうか?
もし、ピンと来ない方がいらっしゃったら、ぜひこの先を読み進めてください!
2.在宅ワーカーには2種類ある
ところで、在宅ワーカーといっても、大きく分けて2種類の働き方があることはご存知でしょうか?
一つは、会社に雇われて、在宅で働き、“給与”をもらう“雇用契約”の在宅ワーカー。
もう一つは、 “業務委託契約”で“報酬”をもらう在宅ワーカー 。 どちらの契約かによって、確定申告のやり方が大きく変わってきます。もし、ご自身の中が、どちらの契約なのか把握されていない場合には、契約書を見るなり、お仕事をもらっている先に問い合わせるなりして、今すぐに把握するようにしてください。
今回の記事は、“業務委託契約”で“報酬”をもらう在宅ワーカーの方向けの記事となりますので、ご注意ください。
3.未確定な日々…
さて、先ほど、皆さまに、「日々、税金に関するあれこれが“未確定”のまま過ごしている」とお伝えしましたが、ここから先は、このことについて少し深堀りしたいと思います。
皆さまは、 “源泉徴収” という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
在宅ワーカーとして仕事をしていると、 “報酬”から、所得税が“源泉徴収”されている場合があります。
「10万円分仕事をしたはずなのに、預金口座を観たら9万円しか振り込まれていない!」と言う場合には、間違いなく、“報酬”から、所得税が“源泉徴収”されています。
仕事をした分よりも振込額が少ないので、「損をした」と感じる方も多いようですが、ご安心下さい。別に損はしていないです。
“源泉徴収”というのは、あくまでも“所得税の前払い”です。報酬から10.21%の“所得税の前払い”が差し引かれて、口座に入金されるのです。
1年を通した税金を“確定”させて、“申告”するのが確定申告ですので、確定した税金よりも、“源泉徴収”された分が多ければ“前払いした所得税”は返金されます。逆に、“源泉徴収”された分が、確定した税金よりも少なければ、前払いだけでは足りないので、追加で所得税を納付することになります。
「日々、税金に関するあれこれが“未確定”のまま過ごしている」と言ったのは、あくまでも、仮の税率(10.21%)で所得税を“源泉徴収”をされているので、本当の税金の金額は、1年が終わらないと確定しない、という意味です。
「1年」というのは、1月1日から12月31日の期間で、これを、翌年の3月15日までに計算し、“確定”させて“申告”する、というのが確定申告です。
「面倒だから確定申告しなくてもいいや」、とスルーしてしまうと、後から罰金をプラスされたうえで税金が徴収される可能性があります。 また、前払いし過ぎている場合でも、税務署からは「あなた、前払いが多いので、確定申告した方がいいですよ」とは教えてもらえないので、多く納め過ぎたまま、ということがよくあります。ご注意ください。
4.確定申告しなければならない在宅ワーカー
確定申告しなければならない人は、税金のルールで決まっています。以下のリンクをクリックして、5秒間だけ眺めて戻ってきてください。
参考:国税庁ホームページ | 申告・納税手続き
これが、確定申告義務のある人です。税理士の私でも、恥ずかしながらすべてを覚えているわけではありませんので、際どいケースでは都度確認するようにしています。
ざっくり言うと、38万円以上の利益があるようなら確定申告が必要、と覚えていてください。ちなみに、どこかの会社に勤めながら、副業で在宅ワークをやる場合には、20万円以上の利益です。
税理士の視点からすると、「今年は確定申告要らない」「今年は要る」と、都度考えるよりは、毎年確定申告をする前提で、毎年同じように準備をして、計算して、その結果、「今年は不要だから申告書は提出しない」というルーティンを組んでいただくほうが、作業的にも心理的にも安定感があって、肝心の仕事に支障が出にくいと思います。
5.確定申告の義務はないが、確定申告書を提出したほうが良い在宅ワーカー
確定申告義務のある方は上記のとおりですが、義務のない方でも、確定申告をした方が良い場合があります。それは、確定申告をすると、税金が戻ってくるパターンです。
上記の『3.未確定な日々…』で、“所得税の前払い”である、“源泉徴収”の制度についてご説明しました。上述のように、あくまでも、“源泉徴収”は仮の計算で天引きされる制度なので、実際に計算して“確定”させた1年間の税金に比べると、前払いし過ぎている場合があります。この場合、確定申告の義務がなかったとしても、確定申告をしない限りは、この前払いし過ぎの税金が戻ってくることはありません。
税理士の経験値として、在宅ワーカーさんの場合、「前払いし過ぎ」なケースが多いですので、確定申告義務がないからと油断せずに、しっかり計算をしてみて、必要があれば確定申告をして前払いし過ぎた分を取り戻すようにして下さい。
6.いくら“源泉徴収”されているかわからない場合
とはいえ、いくら“源泉徴収”されているか分からなければ、所得税を前払いし過ぎているのか、逆に足りてないのかがわかりませんね。
基本的には、ご自身の力だけで把握可能です。10万円分仕事をしたはずなのに、9万円しか振り込まれていなければ、1万円が“源泉徴収”された所得税です。これを1年間分足し算すれば、いくら“源泉徴収”されているか、把握することができます。
お仕事の発注元が、「支払調書」を発行してくれるケースもありますが、そうだとしても、ご自身の計算と1ヶ月分ずれているような場合もありますので、やはり、ご自身で把握されておくことをオススメします。
以上、第1回の記事では、在宅ワーカーの皆さまに関連する確定申告の基礎についてお伝えいたしました。次回の記事では「確定申告の大前提となる経理の方法」について、最終回では「確定申告の方法について、便利なツールの紹介」とともにお伝えいたしますので、楽しみにしていてください。
公認会計士・税理士
矢野会計事務所 所長
つながるサポート株式会社 代表取締役
矢野裕紀
会計事務所では、フリーランス・ひとり社長の、「経理や事務に手が回らない!」にお応えする顧問サービス“やのナビ”、中小企業の経営者の「経理部長は雇えない…けど、非常勤でもいいから経理の取りまとめ役は欲しい!」にお応えするクラウド経理部長サービスを展開。どちらも、クラウド会計ソフトfreeeを活用して、クライアントのお悩み解決をサポートしています。
つながるサポート株式会社(“つなサポ”)では、「つながる感動」をキャッチコピーに、イベント企画、セミナープロデュース、情報発信を行っています。スキルアップをしたい人、課題や悩みを持った人と、その達成、解決を手助けしてくれる人とがつながるサポートをしています。