起業時に役立つ補助金・助成金のメリットと注意点

2024年4月9日

2019年5月22日

起業 補助金 助成金

起業時や起業初期に大きな力になってくれるのが補助金・助成金です。起業には「思い」、「覚悟」といった精神的な要素も必要ですが、ビジネスである以上、やはりお金の話を切り離すわけにはいきません。
3~5月にかけては複数の補助金の公募が始まります。小さな企業がよく使う補助金・助成金の一例が以下になります。

東京都創業助成金(東京都創業助成事業)

小規模事業者持続化補助金

IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

キャリアアップ助成金

補助金と助成金の違いは、補助金は、決められた公募期間中に事業計画書などを事務局に提出し、事業計画の内容が良い上位数%が補助金を得る権利を得ます。例えるなら、大学受験に近いスタイルでしょう。助成金は、ある一定の条件を満たしていれば申請することができ、書類をしっかり作成提出すれば助成金を得ることができます。ただし、予算を使い切ったら公募期間中でも受付終了になるため、早いもの勝ちのスタイルになります。しかしながら、最近は補助金・助成金の定義も曖昧になっており、言葉で判断するのではなく、個々に公募要領(補助金・助成金の取扱説明書のようなもの)を確認する必要があります

次に、補助金・助成金のメリットと注意点についてお伝えします。

原則返す必要がない!

起業 助成金 補助金補助金・助成金のメリットは、原則返す必要がない!」これがすべて、と言っても過言ではないでしょう。つまり、国や自治体から支給されたお金は原則返す必要がありません。(利益が多く出た場合、返還請求があるケースもあり)「原則返す必要がない」といっても制限はあります。経済産業省系の補助金・助成金は「上限額」と「補助率」が設定されることが多いです。例えば、「上限額50万円、補助率2/3」とあった場合、まずホームページ制作などに使った金額の2/3、60万円使った場合は2/3の40万円が補助金として支給されます。しかし、上限額50万円とあるので、90万円使ったとしても60万円が支給されるのではなく、50万円が上限になります。すると「上限額50万円、補助率2/3」という設定であれば、75万円使って50万円補助してもらうと効率的になります。厚生労働省系の補助金・助成金の場合は、「上限額」と「補助率」よりも、「人1名あたり○円補助」という定額補助が多いです。

支給は後払い

起業時の補助金補助金・助成金は夢のような制度ですが、注意点もあります。ここから先は、補助金・助成金の注意点についてお伝えします。
まず、補助金・助成金は先にもらえるものではなく、使った費用のキャッシュバックという後払いになります。時々「申請して、すぐにもらえる補助金はありませんか?」と相談されることもありますが、私の知る限り、そのような補助金はありません。また、後払いということは、先に手元資金を用意しておく必要があります。先述の「上限額50万円、補助率2/3」を最大限に活用しようとするなら、手元資金を75万円用意しておかなければ、絵に描いた餅になってしまう可能性があります。
「キャリアアップ助成金」のような「1名あたり○円補助」の場合でも、先に従業員の給料が出ていくので、後払いの性格といえるでしょう。

支給までに時間がかかる

起業時の補助金支払い後払い前項で後払いについて述べましたが、この後払いは時間を要します。例えば、「小規模事業者持続化補助金」のケースでは、補助金を申請しようとして、事業計画書作成と書類集めを始めて、無事採択され、補助金を手にするまでに、概ね10ヶ月程度かかります。それまでは出費がかさむので、しっかり資金繰りをしておかなければ、補助金が原因で倒産という事態も無きにしもあらずです。

事務処理負担が大きい

助成金・補助金は事務処理負担が大きい補助金・助成金は、通常申請時と精算時に書類作成や書類集めの必要があり、その事務処理が負担になるケースもあります。行政関連業務は書類が多い慣例です。補助金・助成金の申請額が小さい、または自社に営業力がある場合は、補助金のために使う労力よりも営業を優先にするほうが効果的なケースも出てきます

採択通知前に使った費用は無効

採択通知前に使った費用は無効経済産業省系の補助金の場合、大学受験型であるため、あるタイミングで合格通知と同様の意味を持つ採択通知が届きます。そして、補助金をもらうために購入するものは、この採択通知後から購入していくというルールがあります。もし、採択通知前にモノを購入してしまうと、その分が補助対象外、つまり無効になってしまいます。(災害支援などの一部の補助金を除く)書類を申請してから採択通知が届くまで、短くて1ヶ月強、長くて半年以上もかかるので、急を要する場合に使うことは不向きでしょう。

自由に使うことができるとはかぎらない

補助対象経費経済産業省系の補助金は、採択されたからと言って自由に使えるわけではなく「補助対象経費」という、使用許可範囲が予め決められています。使用許可範囲は、補助金によって異なりますが、一般的にパソコンのような、汎用性が高く、私的転用が容易なものは対象外になることが多いです。

起業時や起業初期に大きな力になってくれるのが補助金・助成金ですが、注意点もあることは理解いただけたのではないかと思います。
補助金・助成金のメリットを最大限に享受するには、「公募要領を読む」「資金計画を立てる」「補助金なしの経営も検討する」といったことも、注意を払ってビジネスしていくとよいでしょう。


この記事の執筆者


合同会社ファインスコープ 代表社員
中小企業診断士
西條 由貴男

食品機械メーカー、研修会社を経て、2011年に独立開業。東京開業ワンストップセンターや岡山県よろず支援拠点などの公的支援機関にて、中小企業の経営サポートを行う。著書は「起業のツボとコツがゼッタイにわかる本(秀和システム)、「中小企業診断士のお仕事と正体がよ~くわかる本(秀和システム)」など全6冊出版。