2024年4月8日
2018年11月9日
これから起業を考える人は、商品・サービス開発、宣伝方法などには力を入れている反面、経理に関わることについては、なおざりになっているケースも少なくありません。
しかし、起業において経理に関わる事務(経理事務)は切っても切れないものです。
今回は、この経理事務についてお伝えしていきます。
請求書発行
起業家からの相談で、意外と多いのがこの「請求書」です。
経理や営業といった部門にいると扱うことが多いのですが、SEや建設現場など常に外で仕事している部門の方には、馴染みが薄いことがあります。
実際の相談でも、
「仕事をしたのですが、お金が入ってこないのです!」
「それはお困りですね。請求書はいつごろ出されましたか?」
「請求書って何ですか?」
「・・・」
ということもありました。
BtoB(企業向け取引)の多くの場合、請求書をお客様に送付しないと、お金は入ってきません。
以下が一般的な請求書のポイントです。
・都度請求書を送るのか?1ヶ月分をまとめて送るのか?
・お客様名は正しく入っているか?
・品名、金額は正しく記載されているか?
・請求日付は入っているか?
・個人事業の場合、源泉徴収を差し引いているか?(業種による)
・振込先を記載しているか?
請求書のテンプレートはインターネットから無料でダウンロードできます。
入金の確認(売掛金管理)
請求書を送付した後は、その金額がきちんと入金されたかを確認します。
BtoB取引の場合、請求書受領後、即振込をするケースは少なく、ある一定の条件に基づいて振込が実行されます。この条件を「支払条件」といいます。
支払条件はお客様との交渉で決めていき、中小企業間では「末締め、翌月末払い(ある月の1日~末日まで受領した請求書について、翌月の月末に振込を実行する)」が多いですが、お客様が大企業になると「末締め、5ヶ月後払い」という振込までが長くなるケースもあります。この請求書を送り、入金待ちの状態を「売掛」または「売掛金」といいます。
大企業のサラリーマンの場合、給料が振り込まれなかったという経験をした人は少ないはずなので「そんなことする必要があるの?」と思うかもしれません。しかし、起業ではお金が振り込まれなかったということは、意外に多いと考えてください。
実際ある事業者は、入金の確認をせず、気づいたら半年間お金が振り込まれていなかったお客様がいた、ということもありました。入金を確認するまでが、ひとつの仕事と考えましょう。
経費管理(買掛金管理)
ビジネスではご自身がお金をもらうだけでなく、オフィスの家賃、パソコンなどの備品、宣伝用チラシの製作費など、さまざまな出費があります。
ビジネスに関わる出費のことを「経費」といいます。この経費の管理も経営者の大切な仕事です。
パソコンやコピー用紙などのモノは、家電量販店で現金購入することが多いでしょう。その場合「領収書」が重要になります。コンビニエンスストアで飲み物を買うときにレシートを渡されますが、サラリーマンですと、そのままゴミ箱に捨てていることが多いのではないでしょうか?経費管理には領収書が重要な役割を果たすので、日頃から領収書をもらう習慣を身に付けておくと良いでしょう。
チラシ制作のような場合は、現金取引ではなく、デザイナーや制作会社から請求書をもらって、それに基づき振込することが多く、請求書が重要な役割を果たします。請求書をもらってから振込を実行するまでの間を「買掛」または「買掛金」といいます。売掛金管理と同様、支払条件はお客様との交渉で決めていきますが、一般的には「末締め、翌月末払い」が多くなっています。
固定資産管理
工場用機械設備のようなものは、1,000万円以上するものも少なくありません。金額の大きな買い物に対する出費に関しては、経費のように1回の出費とするのではなく、10年間に分割して経費とするなどの一定のルールに基づいて処理していきます。
このようなビジネスに必要な大きな買い物を「固定資産」といいます。固定資産のルールについては、最寄りの税務署か税理士にご確認ください。
資金繰り
ビジネスでは前述しました売掛金、買掛金のために、仕事が終わったり、モノを売ったりしてから、お金を手にするまでに、タイムラグが発生します。このタイムラグを管理することを「資金繰り」といいます。
資金繰りは、講師やコンサルタント業のように仕入れがないビジネスモデルの場合は、それほど重要ではありませんが、建設業のように資材購入費や職人の外注費が先に出ていく一方で、入ってくるお金が「物件完成月末締め、5ヶ月後払い」など長い場合、特に重要になってきます。
確定申告(決算)
通常1年間の収入・支出を計算し、経営成績を確定する手続きのことを、個人事業では「確定申告」、法人では「決算」といいます。この経営成績より各税金の納付額が決まっていきます。前述してきた内容は、この確定申告や決算のために行うといっても過言ではないでしょう。
個人事業では1月1日~12月31日の1年間の経営成績と決まっていますが、法人ではその1年間を自社の都合で決めることができます。
なお、一つ補足ですが、です。経理事務として業務アウトソーシングサービスすることは税理士法違反となるので要注意です。
起業するにあたり、これだけの経理事務があることをご理解いただけたでしょうか?
次に、経理事務の効率化対策についてお伝えします。
ITによる効率化
コンピューターのない時代は、紙の帳簿に手書きで記入していく方法しかなく、今でも70歳前後の事業者には手書きの帳簿をつけている方もいらっしゃいます。しかし現代はIT化の進展により、コンピューターで経理事務を行うことが一般的です。
具体的には、ソフトウェアなら「弥生の青色申告」や「弥生会計」、クラウドなら「freee」や「MFクラウド」が多く使われています。「freee」については、次回さらに詳しく説明します。
物理的対策による効率化
まだまだ日本の経理事務は紙ベースが中心なので、これらの物理的効率化も必要です。請求書や領収書を識別するためのナンバリング、これらを保管するためのファイリング、処理済みと未処理を区別するためのボックス管理などがあります。
外部活用による効率化
法人の場合、会計が個人事業よりも複雑なため「顧問税理士」をお願いするケースが多いです。個人事業でも顧問税理士をつけている方もいますが、やはりコスト面から敷居が高いのが実情でしょう。その場合は「青色申告会」を活用すると良いでしょう。青色申告会は、青色申告を行う個人事業主・小規模事業者で構成される一般社団法人で、税務・経理などをサポートしてもらえます。
また、コンピューターへの入力やファイリングなどは、業務アウトソーシングサービスの活用も考えられます。「スーパー秘書™」では経理事務のアウトソーシングにも対応しているので、経理事務が負担となっている場合は検討しても良いでしょう。
この記事の執筆者
合同会社ファインスコープ 代表社員
中小企業診断士
西條 由貴男
食品機械メーカー、研修会社を経て、2011年に独立開業。東京開業ワンストップセンターや岡山県よろず支援拠点などの公的支援機関にて、中小企業の経営サポートを行う。著書は「起業のツボとコツがゼッタイにわかる本(秀和システム)、「中小企業診断士のお仕事と正体がよ~くわかる本(秀和システム)」など全6冊出版。