2025年5月19日

国会でも話題になった「リスキリング」は、最近よく見聞きする言葉ですね。
リスキリングとは新しい技術や知識を身につけることを指し、「学び直し」といわれることもあります。
ビジネス環境が目まぐるしく変わるなか、企業の規模、業界、現在持っているスキルに関係なく、一人ひとりがリスキリングすることが期待されています。
同時に事業者は従業員のリスキリングを支援することが求められています。
今回は、スモールビジネス経営者の立場からリスキリングについて考えていきます。
使える補助金・助成金についても紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
リスキリングに補助金がつく理由

政府の「骨太の方針2024」でリスキリングの推進が大きな焦点となるなど、国を挙げてリスキリングを支援しています。
その理由は主に3つです。
まず、少子高齢化に伴う労働力不足が挙げられます。
人手が少なくても成果を上げるために、従業員一人ひとりがスキルを高めて生産性を向上することが期待されています。
次に、AIやロボットで代替可能な仕事が増えてきたことも要因です。
新しいスキルや知識を身につけなければ、仕事を失う可能性が高くなってきました。
最後は、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急務となっていること。
DXとは仕事をデジタル化するだけではなく、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、競争力を高めることを指します。
DXを推進できる人材育成のため、リスキリングが求められています。
リスキリングの重要性は理解しつつも、スモールビジネス経営者にとって、どのようなスキルや知識を、どのような手段で獲得させたらよいかなど、考えることは山積みです。
当然、費用も発生します。
従業員がリスキリングにより成果を上げて増収増益が実現できれば良いのですが、結果が出るまで時間がかかるもの。
一時的な費用負担が厳しいと感じる経営者も多いでしょう。
そこで、政府は補助金・助成金制度を用意し、経営者を支援しています。
厚生労働省、経済産業省、文部科学省、地方自治体などが、それぞれリスキリング支援を行っています。
リスキリングが企業にもたらす3つのメリット

従業員にリスキリングを実施させると、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
具体的に見てみましょう。
社員のスキルアップによる業務効率化
ITやAIを学べば、今まで時間がかかっていた業務を短時間で実行できたり、自動化できたりするため、業務効率化が実現します。
ルーティンワークにかかる時間を減らせれば、創造性の高い仕事に時間を割くことができるでしょう。
社員のモチベーションのアップ
リスキリングにはお金と時間、学ぶ労力がかかります。
会社がリスキリングにかかる費用を全額、または一部負担する、リスキリングの時間も業務時間にするなどの対策を取れば、社員の学ぶモチベーションは高まるでしょう。
リスキリングの結果、企業が成長し、自分の働きが会社に貢献している、社会の役に立っていると実感できることでも社員のモチベーションはアップします。
定着率が向上し、採用コスト削減につながる
社員にとって魅力的な会社になれば、離職率も低下します。
社員が1人辞めたときの、引継ぎ、新しい人を採用・教育するコストと労力といった、負担の大きさを実感している経営者も多いでしょう。
社内でリスキリングを推進することは、長い目で見たら企業にとって大きなプラスになります。
2025年に注目のリスキリング関連補助金・助成金一覧

では、具体的にどのようなリスキリング関連の補助金・助成金があるのでしょうか。
スモールビジネス経営者におすすめの補助金・助成金を4つ、紹介します。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
厚生労働省が提供する助成金制度で、企業が職務に関連した専門知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した際に、かかる経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。
OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練にかかる費用を助成する「人材育成支援コース」、高度デジタル人材育成を目的とした「人への投資促進コース」、教育訓練制度を利用した「教育訓練休暇等付与コース」がありますが、スモールビジネス経営者におすすめなのが「事業展開等リスキリング支援コース」です。
「事業展開等リスキリング支援コース」は、事業展開やDXに伴って新たな知識を習得させるための訓練にかかる費用や賃金の一部が助成されるもの。
中小企業の場合、経費助成率は75%と高率助成を受けられます。
賃金上昇を踏まえ、令和7年4月には賃金助成額の引き上げも行われました。
新しい事業やビジネスを展開していきたいと考えている方は、ぜひ詳細な条件を確認してみてください。
キャリアアップ助成金(正社員化支援)
厚生労働省が提供する制度で、アルバイトやパート、契約社員や派遣社員など非正規雇用の従業員を正社員化した場合に、かかった費用が助成されるものです。
雇用保険適用事業所の事業主が利用できます。
助成額は企業規模によって異なります。
たとえば、中小企業で雇い入れから3年以上の有期雇用者(重点支援対象者)を正社員にする場合、1人当たり80万円(40万円×2期)が助成されます。
1期は6ヶ月のため、重点支援対象者を正社員に切り替えて6ヶ月雇用すると40万円、さらに6ヶ月雇用すると40万円が助成されます。
また、正社員転換制度を新たに規定して正社員に転換させた場合も、中小企業なら20万円が加算されます。ただし、利用は1事業所あたり1回のみです。
優秀な人材を流出させたくないと考えているなら、利用を検討してみてください。
事業再構築補助金
経済産業省が提供する制度で、新市場進出や事業・業種転換、事業再編などで規模の拡大を図っている企業を支援する制度です。
補助金額はコースや従業員規模によって異なります。
成長分野進出枠(通常類型)なら、従業員30人の企業の場合、補助上限は3,000万円、補助率は中小企業なら費用の1/2です。
高額な補助金が受け取れますが、事業者による支出を確認した後に補助金が支払われるため、一時的に負担が発生します。
また、補助事業終了後にも成長度合いの状況報告が必要です。
公募制で、応募のチャンスは年2~3回。
チャンスを逃さないように、こまめに情報をチェックしてください。
地方自治体の独自支援制度
国だけでなく、地方自治体も補助金・助成金制度を用意しています。
会社がある自治体に問い合わせてみてください。
たとえば、東京都には「事業内スキルアップ助成金」という制度があります。
職務のスキルアップのために自社で企画した研修が助成対象です。
宮城県には、県内の中小企業・小規模企業を対象に、生産性向上を目的としたデジタル化の取り組みに対する補助事業「中小企業等デジタル化支援事業」があります。
石川県金沢市では、金沢市内で勤務する従業員や役員を対象に、資格試験のための受験手数料、講座受講料の一部を助成する「中小企業デジタル人材リスキリング促進助成金」があります。
補助金・助成金申請の流れと注意点
~経営者が押さえておくべき5つのステップ~

確実に補助金・助成金を受け取れるよう、流れを確認しておきましょう。
1.対象制度の確認
まず、自社が受け取りの対象になるか、対象となる従業員がいるかを確認しましょう。
同時に、応募締め切りや受取の時期も確認しておきます。
2.研修計画・事業計画の立案
応募する際には、研修計画や事業計画を立案して書類で提出する必要があります。
提出後に計画内容を変更することもできますが、変更届を提出する必要があるなど、手間がかかります。
できるだけ、実態に即した計画を立てておきたいですね。
3.事前申請と書類準備
訓練や事業を開始する前に担当する部署に計画書を提出するケースが一般的です。
期限内に提出し、記入もれや書類の添付もれがないように気をつけましょう。
ミスがあって差し戻しをされると、支給開始までの時間が余分にかかります。
電子申請ができるケースが増えています。
申請までの時間を短縮できるので、積極的に活用したいですね。
4.研修実施・報告
研修を実施したら、所定のフォーマットに則って報告書を作成し、提出します。
5.助成金の受給・活用報告
報告書の内容を確認してから、支給が決定します。
計画届・報告書を提出したからといって確実に支給されるわけではありません。
支給申請までに訓練にかかった経費の支払いが完了していることが支給条件になるケースもあります。
必ず詳細な条件を確認してください。
社内リスキリングを成功させるために
~スモールビジネス経営者ができる5つの支援~

研修費用の捻出だけでなく「時間」の確保を
所定の労働時間外でリスキリングしてほしい、勤務時間内は仕事に専念して欲しいと考えるかもしれません。
しかし、従業員の1日は24時間です。
心身のバランスを崩さないためにはプライベートの時間も必要ですし、睡眠時間の確保も欠かせません。
労働時間を短縮する、勤務時間内にリスキリングの時間を確保するのも、経営者の重要な仕事です。
チームを巻き込んだ支援体制を作る
リスキリングのために外部の研修に行く、勤務時間内に学ぶとなると、チーム内で業務負担の割合を見直すことも必要でしょう。
特定の人だけに負担が集中すると、職場内の雰囲気が悪くなりがちです。
社内・チームを巻き込んで、全社でリスキリングに取り組むという姿勢を示しましょう。
従業員とのコミュニケーションを密にとる
従業員に負担がかかるからこそ、従業員とのコミュニケーションが欠かせません。
補助金や助成金を利用して制度を整えつつ、リスキリングのメリットや効果、必要性を伝え、リスキリングについて理解を深めておきましょう。
成果を発揮できる実践の場を用意する
学んだスキルを実際の業務やプロジェクトで活用できるように、実践の機会を意図的に作ることが大切です。
例えば、新しいツール導入プロジェクトを任せる、社内研修の講師をしてもらうなど、アウトプットの機会を設けましょう。
努力と成長を評価し、フィードバックを行う
リスキリングの過程や成果に対して、適切な評価や承認、フィードバックを行うことがモチベーションを保つカギです。
「成長していることが認められている」という実感は、次の学びへの原動力になります。
まとめ

従業員のリスキリングの時間を確保したいけれど、毎日の仕事で大忙しというスモールビジネス経営者のみなさん、ルーティンワークを中心とした外注できる業務はアウトソーシングしませんか?
お客様からの問い合わせ対応、日々のデータ集計、ブログの更新、動画の編集など、意外と外注できる業務はあるものです。
また、業務マニュアルを整備すれば、経験が浅い従業員でも作業できる、ミスが減って生産性が向上するといったメリットもあります。
アウトソーシングできる業務は、スーパー秘書にお任せください。
事務局業務はもちろん、データ集計、ブログ執筆、動画編集、業務マニュアル作成など、多様な業務に対応できるスタッフが多く在籍しています。
外注して空いた時間を、ぜひ従業員のリスキリングの時間にあて、あなたのビジネスを大きく成長させてくださいね。