2024年6月20日
2021年10月20日
インボイス制度をご存知でしょうか。
消費税を納める事業者だけでなく、消費税を納める事業者とやりとりをするスモールビジネス事業者にも対応が求められる制度です。
インボイス制度という言葉を初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。
そこで、インボイス制度の概要と対応方法について解説します。
インボイス制度とは?
インボイス制度とは、令和5年(2023年)10月1日から導入される事業者向けの新しい税制です。正式名称を「適格請求書等保存方式」と呼びます。
インボイス制度では、売り手である登録事業者が仕入税額控除を受けるためには、買い手である取引先課税事業者から求められたときはインボイス(適格請求書)を交付しなければなりません。
仕入税額控除とは、消費税の課税売上にかかる消費税から課税仕入にかかる消費税を控除することです。消費税の課税事業者は、課税売上と課税仕入から計算した消費税の差額を納税する義務があります。
例えば1,000円の商品を販売する場合、消費税10%では100円が消費税です。このうち、仕入れ原価が300円、消費税が30円であれば、この30円を100円の消費税から差し引き、残り70円を消費税として納めます。
この仕入れ価格に対する消費税分を支払う消費税から控除する仕入税額控除を受けるために、インボイスという書面が必要になるのです。
さらにインボイス制度では、買い手は仕入れ税額控除の適用を受けるために原則、売り手から交付されたインボイスの保存が必要となります。
インボイス制度導入の影響
これまで消費税を国に治める必要がある事業者は、課税売上高1,000万円以上であり、1,000万円以下の事業者は非課税事業者として消費税の納税が免除されてきました。
ちなみに、消費税を納める必要のある事業者を課税事業者、消費税を支払う必要のない事業者を免税事業者と呼びます。
2023年10月1日のインボイス制度導入の最も大きな影響は、課税事業者だけでなく、免税事業者の売上にかかわる変更がなされることです。
先ほどの説明の通り、課税事業者は仕入税額控除を受けるためには、仕入れ先からインボイスを発行してもらう必要があります。
インボイス発行のためには、適格請求書(インボイス)発行事業者として国の登録事業者になる手続きが必要です。
ちなみに、インボイス発行事業者(登録事業者)は、課税事業者である必要があります。
仕入れ先がすでに課税事業者であれば問題ありませんが、もし仕入れ先が売上高1,000万円以下の免税事業者である場合、インボイスが発行できません。
その場合、仕入税額控除を受けるために、仕入先を変更するか、仕入税額控除を受けないか、のいずれかの経営判断を行うことになります。
反対に免税事業者の視点から見た場合、インボイス制度は売上高減少を招く大きな脅威です。
これまでは、売上高1,000万円以下であれば、消費税を納める必要がありませんでした。
一方で請求書上は、消費税を含んだ価格で買い手に請求してきました。消費税10%であれば、販売価格に10%を上乗せした価格で請求してきたはずです。
免税事業者は消費税を納める必要がないため、税込価格の請求は、実質売上高を10%押し上げる要因になっていました。
つまり消費税率が上がればその分、何も努力せずとも売上も利益も伸びていく、という構造になっていたのです。
しかし、インボイス制度が導入されると、これまで通り消費税を上乗せして請求することが難しくなってきます。
インボイス制度でスモールビジネス事業者に求められる対応
インボイス制度が導入されると、スモールビジネス事業者のうち免税事業者は、大きな経営判断を迫られます。それは2つの選択肢です。
インボイスを発行する登録事業者となるために課税事業者になるか、これまで通り免税事業者でいるか、の2択です。
買い手の事業者は仕入税額控除を行うために、免税事業者に対してもインボイス発行を求めてくる可能性があります。
仮に免税事業者がこれまで通り免税事業者でいるという選択肢をとれば、インボイスを発行できないため、買い手が仕入税額控除のできないことを理由に取引を断ってしまうかもしれません。
あるいは、仕入税額控除ができない分を値引きしてほしい、という要求を突き付けられる可能性もあります。
一方で免税事業者がインボイスを発行するために課税事業者となった場合は、消費税を納税する必要があります。
免税事業者はこれまで消費税分がそのまま売上と利益に反映されていましたが、課税事業者となった場合は利益が消費税分だけ減少することになるでしょう。
つまり、免税事業者であるスモールビジネス事業者にとっては、引き続き免税事業者であるにせよ、インボイス発行するにせよ、売上高や利益減少の影響を抑えるために何らかの企業努力をしなければならないことになります。
特に免税事業者で居続ける場合は、取引先から強い値引き交渉がある可能性や、最悪の場合、仕入先から外されてしまう可能性もあります。
いまから買い手の事業者とインボイス制度についてよくコミュニケーションをとったうえで、どのように対応するかを検討しておきましょう。
インボイス制度への対応方法
既に課税事業者であればそこまで大きな対応は必要ありません。反対に免税事業者であれば、インボイス制度に対応するべく、何らかの対応が必要です。
もし免税事業者が、インボイス発行できる登録事業者になる場合は、事業所所在地域の国税局へインボイス制度に関する登録申請書類を届け出る必要があります。
また、インボイス発行事業者になった場合、取引先の求めに応じてインボイス発行が必要です。インボイスは記載事項が国税局によって定められています。
【インボイスの記載事項】
- インボイス発行事業者の氏名または名称、登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
こうした記載事項に対応するフォーマットを作成のうえ、取引先に交付する必要があります。
取引先が多ければ多いほど、毎回インボイスを発行する手間が増えるでしょう。
こうした手間を防ぐには、会計ソフトを使用してインボイスを発行する方法や、オンラインアシスタントを活用してインボイス発行業務を代行してもらうといった方法があります。
スーパー秘書では、こうしたインボイス発行を含む請求書処理業務に対応できる優秀なオンラインアシスタントが在籍しています。
もし経理処理が手間だと感じる場合は、スーパー秘書に相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
インボイス制度は一見するととても分かりづらい制度です。
しかし分からないからといって、分からないままにしておくと、いざインボイス制度が始まった際に、最悪の場合、取引先を失ってしまう可能性も十分にあり得ます。
そうしたリスクに備えるためには、何が必要でしょうか?
いまからインボイス制度についてきちんと理解するとともに、取引先と良好なコミュニケーションを心掛け、自社はインボイス制度にどう対応するかを考えておく必要があるでしょう。
また、インボイス制度への対応だけでなく、インボイス発行の手間にも備えておく必要があります。
会計ソフトをアップデートしておくほか、スーパー秘書などのオンラインアシスタントを活用しても良いでしょう。
インボイス制度が導入されるのは2023年ですが、まだまだ先の話だと思わずに、今からしっかりと備えておきましょう。