2024年6月20日
2023年11月16日
もともと電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類を電子データとして保存したい事業者のみに適用される法律でした。
しかし、2022年1月の法改正で電子取引データの紙保存が禁止されたことにより、スモールビジネス経営者や個人事業主にも対応が求められる法律となりました。
「電子化」と聞くと、時間と手間がかかって煩わしいと思われる方も多いのではないでしょうか。
ただし、紙で管理しているとオフィスに行かないと確認できなかった書類が、パソコン1台でどこでも確認できるようになるという点で、リモートワークの推進に大いに役立つ施策とも考えられます。
本記事では電子帳簿保存法の基本をおさらいすると同時に2023年の税制改正(2024年1月施行)で改正されたポイントを解説します。
また、来たるべき施行に向けてスモールビジネス経営者がすべき対応もお伝えします。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、一定条件のもとに帳簿や決算書、国税関係の書類を電子化して保存できることを定めた法律です。
電子帳簿保存法については2022年1月の法改正を受けて、既にスーパー秘書公式ブログに記事をあげていますので、ぜひご覧ください。
電子帳簿保存法とは~対応できていますか?2022年改正のポイントと注意点
ただし、この電子帳簿保存法、「分かりにくい」というご意見も多く聞かれています。
分かりにくさの理由の一つとしては、当初からのルール変更が何度もあったことがあげられます。
さらに、以下にあげる3つの制度上の区分とそれぞれの保存方法が異なる点が混乱を招いていると考えます。
3つの制度上の区分とは「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データの保存」です。
電子帳簿等保存
自分が会計ソフト等で作成した帳簿や決算関係書類などを電子データのままで保存することを指します。
スキャナ保存
紙で受領・作成した書類を画像データで保存することです。
具体的には、相手から受け取った請求書や領収書などを、スキャニングして保存することなどがあげられます。
電子取引データの保存
電子メール・EDI(企業間等での電子データ交換)・クラウドサービスなどで受け取った取引に関するデータを電子のまま保存する方法です。
具体的には、領収書や請求書といったように、紙でやりとりしていた場合にはその紙を保存しなければならない内容をデータでやりとりした場合は「電子取引」に該当し、そのデータを保存しなければならないというものです。
下記で2023年の法改正が3つの区分に与える影響について説明します。
電子帳簿保存法の改正点のポイント
電子帳簿等保存とスキャナ保存
・希望者のみの利用(紙保存OK)
・要件が緩和され、紙保存かデータ保存を選択できるようになりました。
・税務署長の事前承認が不要になりました。
電子取引データの保存
本来2024年1月からは、電子メールで受領・送付した請求書・領収書等は、改ざん防止措置や検索機能の確保等の保存要件に応じた電子データの保存が必要になる予定でした。
2023年の税制改正で、システム対応などに間に合わない中小企業の経理事務への負担を考慮し、法改正対応での要件が緩和され従前の保存方法のままで対応できることになりました。
※ただし、従前の方法のままで対応するには条件があります。
2021年改正 | 2023年改正 (2024年1月施行~) | |
---|---|---|
電子帳簿等保存 | 紙保存が不可 電子データの保存が必要 | ・要件緩和 →紙保存かデータ保存を選択 ・税務署長の事前承認不要に ・希望者のみ利用 |
スキャナ保存 | 紙保存が不可 電子データの保存が必要 | ・要件緩和 →紙保存かデータ保存を選択 ・税務署長の事前承認不要に ・希望者のみ利用 |
電子取引データの保存 | タイムスタンプなどによる改ざん防止措置、日付・取引先・金額の検索機能をシステムなどで確保をした上でデータで保存が必要 | ・原則対応必要だが、システム対応等に間に合わない中小企業は従前の方法で対応可 ※ただし従前の方法で対応する条件は①出力書面を保存②税務職員から求められた際にデータで渡せるという2点を満たしていること |
商工会議所のサイトが分かりやすいので参考に記載いたします。
引用元HP:日本商工会議所
引用元HP:国税庁電子帳簿等保存制度特設サイト
さらに「優良な電子帳簿に係る過少申告課税の軽減措置」の対象となる帳簿の範囲にも変更がありました。
見直し前はその他必要な帳簿とは、全ての青色関係帳簿でしたが、見直し後は売上帳・仕入帳簿などに限定されましたので注意しておきましょう。
引用資料:国税庁「電子帳簿保存法の内容改正チラシ」
今回の電子帳簿保存法の改正でスモールビジネス経営者がすべき対応は?
では、来るべき電子帳簿保存法の施行に向けて個人事業主を含むスモールビジネス経営者は一体何をしたらよいか?
以下に最低限すべきポイントをお伝えしたいと思います。
社内の電子取引を把握&整理しましょう
電子取引の電子データ保存方法を検討する際に、まず、自社でどのような電子取引があるのかリストアップしてみましょう。
例)
・取引書類:請求書、領収書などどのような取引書類があるか?
・授受方法: 取引先ごとに何で受け取っているのか? (PDF・EDI・クラウドサービス・郵送など)
・保存方法、場所: 受け取ったものは、どのようにどこに保存しているのか?
・件数:月間、年間でどのくらいの件数なのか?
郵送など紙で原本をもらっている取引先を減らしていきましょう
紙での保管と電子の保管が混在すると業務の煩雑化に繋がるので、今のうちからできる限り電子データでの受領に変えていくことをおすすめします。
電子取引データの保存&管理方法の検討
本来は電子取引データの保存に関しては、タイムスタンプでの改ざん防止措置と「日付・金額・取引先」での検索機能の確保などが必要でした。
2023年の法改正でシステム導入が難しい中小企業は従前の対応でOKとされていますが、取引の規模や内容に応じて顧問税理士や関係各所と保存&管理方法の検討をしましょう。
「タイムスタンプ機能のあるシステム」または「訂正削除履歴が残るシステム」などの利用を検討する良い機会かもしれません。
運用ルールの作成と周知
従業員がいるスモールビジネス経営者であれば、従業員が電子取引でうっかり不正行為を行わないよう運用ルールの作成と周知が必要です。
従業員にも電子帳簿保存法の考え方を理解してもらうとともに、顧問税理士や弁護士と相談して、定期的に内部監査も行いましょう。
まとめ:スモールビジネスが電子帳簿保存法に対応するために
電子帳簿保存法は、2021年・2023年と続けて税制改正があり要件が緩和されたものの、複雑なのは変わりません。
本業が忙しい中、電子帳簿保存に関する事務作業には多くの時間と手間がかかります。
・電子取引データを保存するシステムの操作方法のマニュアル化
・管理に関する事務作業(Excelで表を作成して取引情報を保存や、帳票のファイル名の整備など)
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※本記事は、2023年10月末現在の国税庁の情報を元に作成しています。税制については今後も課税庁側の判断により、変更される場合があります。
※本記事は2022年12月に発表された令和5年度税制改正大綱をもとに作成した弊社の見解です。本情報をもとに実際に運用される場合は、事前に顧問税理士、所轄の税務署に必ずご確認をお願いいたします。
本記事による損失が発生した場合も責任はおいかねます。