個人事業主から法人化するときに知っておきたい法人格の特徴

2024年4月9日

2019年3月4日

個人事業主から法人化するときに知っておきたい法人格の特徴

個人事業から法人化をする時に、法人格で悩むケースがあります。今回は、数ある法人格でも、特に相談が多い「株式会社」、「合同会社」、「有限会社」、「一般社団法人」について解説していきます

株式会社

個人事業主から法人化するときに知っておきたい法人格の特徴 株式会社法人として最もポピュラーなのが「株式会社」です。東京商工リサーチの最新の調べでも、新設法人の約69.5%が「株式会社」という結果が出ています。

「株式会社」設立の行政手続きは以下になります。

1. 定款の作成・認証(公証役場)
2. 商業登記(法務局)
3. 開業の届出(税務署他)
4. 社会保険・厚生年金の加入(年金事務所)

上記に加え、金融機関での法人口座開設が最低限必要な手続きになります。
(法人口座開設は絶対に必要な要件ではありませんが、日本の商慣習上、法人が法人口座を持っていないと大きな信用ダウンになってしまいます。)
また、「株式会社」設立には、通常以下のように約24万円の法定費用が必要になります。

1. 定款認証手数料 50,000円
2. 定款に貼る収入印紙40,000円
3. 謄本の交付手数料250円/定款1ページ
4. 登録免許税150,000円

一般的に、「株式会社」の対企業からの信用度は、他の法人格よりも高いと言われています。現行の会社法施行以前は、資本金として1,000万円以上必要でしたが、現在は1円から設立できるようになりました。しかし、ベテラン経営者には、資本金1,000万円以上必要だった時代の名残があり、それが「株式会社」の信用の一因になっていると言われています。

合同会社

個人事業主から法人化するときに知っておきたい法人格の特徴 合同会社現行の会社法にて制定された法人格で、東京商工リサーチの最新の調べでは新設法人の約20.5%が「合同会社」となっています。
設立の手続きは、「株式会社」に近いですが、公証人による定款認証がないのが特徴です。また、登録免許税も60,000円で、トータルで株式会社よりも約140,000円安い100,000円の法定費用で済みます。
会社の運営面も「株式会社」よりシンプルです。例えば、役員の任期は、「株式会社」が最長10年で、任期が切れたら再任の手続きが必要になるのに対し、「合同会社」は任期がありません1年に1回、自社の経営成績を公開する決算公告が「株式会社」は義務であるのに対し、「合同会社」は義務ではないなど、「株式会社」よりも運営負担がかかりません。
一般的に、法人格の信用面では、「合同会社」は「株式会社」よりも不利と言われます。これは「合同会社」が生まれたのが平成18年と比較的新しいため、ベテラン経営者には知らない人もいる、「合同会社」という言葉の響きから「ビジネスというより、サークルのような雰囲気ではないか?」と思われてしまう、などの理由があると言われています。しかし実際には、「アップル・ジャパン」、「アマゾン・ジャパン」、「西友」といった有名な企業も合同会社なので、長い目で見るといずれはその差は縮小されていくことでしょう。
また、「株式会社」の代表の肩書きが「代表取締役」であるのに対し、合同会社は「代表社員」であることもデメリットと言えるでしょう。気にしない人は気にしないと思いますが、「従業員代表」の印象が残り、やはり箔がつきにくいのも事実です。そのため、「合同会社」の代表の肩書きを「代表」や「CEO」とする人も多いです。

有限会社(特例有限会社)

個人事業主から法人化するときに知っておきたい法人格の特徴 有限会社現行の会社法が施行される以前に設立することができたのが、「有限会社」です現在は新規に設立することはできませんが、会社法制定以前に設立した有限会社はそのまま使うことができ、これを「特例有限会社」と言います。先に説明した「合同会社」と入れ替わる形になったこともあり、「役員の任期なし」、「決算公告義務なし」など、「合同会社」と近い部分が多いです。「合同会社」と比べた時の大きな違いは、「株式会社」と同様に「代表取締役」を称することができることでしょう。
「合同会社」と同じくらいに運営負担も少なく、かつ「代表取締役」を称することが「有限会社」のメリットですが、先にお伝えしたように、現在は新規に設立ができません。どうしても「有限会社」にしたい場合は、休眠中の「有限会社」を買収する方法があります。「有限会社」は、会社法が施行された平成18年以降は設立できないことから、「有限会社=社歴が12年以上ある会社」と見せることもでき、これらのメリットを得るために「有限会社」の買収をする人もいらっしゃいます。

一般社団法人

個人事業主から法人化するときに知っておきたい法人格の特徴 社団法人近年じわじわと増えてきている法人格が、「一般社団法人」です。東京商工リサーチの最新の調べでも、「株式会社」、「合同会社」に続く第3位の新設数になっています。
「一般社団法人」設立にあたっては、「株式会社」、「合同会社」が1人の発起人で設立できるのに対し、「一般社団法人」は最低2人の発起人が必要になります。ただし、2人の発起人のうち1人が「一般社団法人」設立後に抜けたとしても、「一般社団法人」を続けることができます。法定費用に関しては、「株式会社」と同様に定款認証手数料50,000円は必要になりますが、定款認証に貼る印紙代40,000円が不要になり、登録免許税も「合同会社」と同様に60,000円です。
「一般社団法人」のメリットは、名称の響きから「公益性」のイメージがあることでしょう。そのため、「一般社団法人」の名称として、「一般社団法人○○○協会」というものが多くなっています。法人格の信用に順位をつけるなら「株式会社>一般社団法人>合同会社」になると考えます。かつては公益性を訴えるために「NPO法人」がよく設立されていましたが、近年はNPO法人が反社会的勢力の隠れ蓑に使われることもあって審査が厳しくなり、「一般社団法人」にシフト化されたと考えています。
また、一定の要件を満たせば、税制面でも有利になることも「一般社団法人」のメリットです。
一方で、「一般社団法人」のデメリットは、補助金などの国や自治体の公的支援が受けられないケースがあることでしょう。補助金の公募要領を見ると、対象者として「社団法人は除く」と書いてあるケースをよく見かけます。「一般社団法人」は一定の要件を満たすと税制面で有利になる代わりに、税金が財源となる公的支援には制限を与えているのではないかと考えています。また「株式会社」や「合同会社」は、会社に余った利益を出資者に分配することができますが、「一般社団法人」ではそれができないこともデメリットの一つです。

まとめ

個人事業主から法人化するときに知っておきたい法人格の特徴取引先が企業、商品単価が高い、将来は会社を大きくしたいならば、「株式会社」。
取引先が消費者で商品単価も安い、決まっている取引先と取引中心で身の丈経営ならば、「合同会社」。
ラクな運営で代表取締役の肩書きがほしい、社歴を長く見せたい、休眠会社の見込みがあるならば、「有限会社」。
公益性・非営利性のアピール、セミナーが事業の中心、公的支援を受ける予定がないならば、「一般社団法人」。
法人格を選ぶ目安として、これらを考えておくと良いでしょう。

次回は、「法人化をするにあたって、予算が潤沢にない中でも力になってくれる公的支援機関について」お伝えしていきます。


この記事の執筆者


合同会社ファインスコープ 代表社員
中小企業診断士
西條 由貴男

食品機械メーカー、研修会社を経て、2011年に独立開業。東京開業ワンストップセンターや岡山県よろず支援拠点などの公的支援機関にて、中小企業の経営サポートを行う。著書は「起業のツボとコツがゼッタイにわかる本(秀和システム)、「中小企業診断士のお仕事と正体がよ~くわかる本(秀和システム)」など全6冊出版。